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「小児科医が特定の身体所見を認め、放射線科医によるX線検査において椎骨の異常が確認された場合には、遺伝学の専門医に診せる必要があると判断して欲しいですね。」 -Harmatz医師

関節症状はムコ多糖症の最初の徴候であることが多い

ムコ多糖症の正確かつ時宜を得た診断に欠かせないのは、リウマチ科医が疑いを抱くこと

ほとんどのタイプのムコ多糖症(MPS)において、骨と関節に関する特徴は非常に早い段階からみられます。このような筋骨格系の症状を有する患者さんはリウマチ科を訪れることが多く、大抵の場合は、その後にムコ多糖症の診断を受けています。1

診断が遅れると、次のような状況に至る可能性があります。

  • 治療の遅れ2
  • 多臓器にわたる重度の合併症1,3
  • 不可逆的または末期の臓器障害1
  • 疾患に特化した治療を十分に受けることができず、手術による死亡のリスクが高まる1,5-8
ムコ多糖症の徴候・症状は予測不可能なうえ臨床的にも多様性があるので、診断が困難です。患者さんは、ムコ多糖症の非古典的および/または古典的な徴候を呈し、疾患の進行速度には速いイプと遅いタイプがあります。2-4

ムコ多糖症を疑い、照会し、除外する

関節合併症は早期に発現して進行していきますので、リウマチ科が患者さんを早期に鑑別し、疾患に特化した治療や可能な療法を受けてもらうことができれば、ムコ多糖症患者さんとそのご家族の生活に好影響を与えられます。早い段階で介入できるよう、次に挙げるような徴候・症状にご注意ください。

  • 関節硬直または関節弛緩6,9
  • 炎症のない関節合併症10
  • 進行性の関節可動性の低下5
  • 手根管症候群10
  • 骨の異常10
リウマチ合併症は一様に進行し、時間の経過とともに発現率と重症度が高まります。ムコ多糖症の患者さんは往々にして多岐にわたる一群の症状を呈しますが、単独で現れたものであっても、遺伝学の専門医や代謝疾患の専門医に照会する価値はあります。1,11

徴候・症状はかすかに認められる程度かもしれませんし、顕著に現れるかもしれません。ムコ多糖症を示唆する骨・関節の特徴のうち、よくみられるものは次のとおりです。1

  • 古典的な特徴である炎症を伴わない関節合併症やびらん性骨病変が初期に現れる
  • 「鷲手」
  • 脊柱変形[わずかな、または明らかな突背(角状脊柱後弯)、脊柱側弯、円背(脊柱後弯)、脊柱前弯]
  • X線画像で多発性骨形成不全が認められる

この他の発現し得る徴候・症状については、次の表をご覧ください。

Musculoskeletal-manifestations-of-MPS_AMc

これらすべての関節症状がどのムコ多糖においても同じように現れるというわけではありません。

  • ムコ多糖症IVA型でみられる骨異形成は、他のムコ多糖症における多発性骨形成不全とは異なります。6
  • 靭帯弛緩/関節の過可動もムコ多糖症IVA型に特有の合併症ですが、他のタイプでみられる関節合併症は、往々にして可動性の低下と硬直を伴います。6

ムコ多糖症は小児疾患であると間違って認識されていますが、進行の遅いムコ多糖症患者さんもいらっしゃいますので、年齢に関わらず疑いを持つ必要があります。6,9

  • 炎症を伴っているかどうかに関わらず、関節症状は進行の遅いムコ多糖症の主要な特徴です。6,9
  • 次のような患者さんを診察したときには、ムコ多糖症の照会を考慮してください。
    • 抗炎症療法(例.非ステロイド性抗炎症薬)では効果が得られない、少数関節の若年性関節リウマチを有する患者さん10,7
    • 同じ様な疾患を持つ兄弟・姉妹がいる患者さん2,7
    • びらんのない増殖性滑膜炎がMRIで認められた患者さん7
    • 全身性・限局性の炎症徴候を伴わない関節痛と関節拘縮がみられる患者さん6

硬直と拘縮はあらゆる関節に生じ得るものですが、往々にして指節間関節に現れます。6

  • 特徴的な「鷲手」の変形は、両手の指節間関節に疾患の影響が及んだときに現れます。6
    • ムコ多糖症の患者さんは、遠位指節間関節合併症を患う可能性が高くなります。6
    • 炎症性関節炎を有する患者さんは、近位指節間関節または中手指節関節の合併症を呈する可能性が高くなります。6
  • 手根管症候群は小児においてよくみられますので、小児患者さんにこの症状がみられた場合は、すぐにムコ多糖症を疑ってください。6

ムコ多糖症の疑いが高まる徴候・症状について詳しく調べる

ムコ多糖症は、その症状と進行速度が予測不可能なうえ多臓器にわたり、また多様性もあるので、診断が困難です。1

診断の遅れは珍しくありませんが、患者さんの転帰に深刻な影響を与えてしまうかもしれません。正確かつ早期に診断を下すために、多臓器にわたる徴候・症状を早い段階で鑑別することが重要です。現場で遭遇し得る多種多様なムコ多糖症の徴候・症状に精通しておきましょう。2,5

よくみられる関節症状か、それともムコ多糖症か?

ムコ多糖症における関節症は似通っているので、より一般的なリウマチ症状と混同されてしまうことがあります。6  またムコ多糖症の治療は、人生を変えられるほどの影響を持つ可能性がありますから、正確かつ早い段階での診断が大切です。ムコ多糖症の疑いがある患者さんがおられましたら、遺伝学の専門医や代謝疾患の専門医に照会してください。1

Differential-diagnoses-to-rule-out-MPS-110_AMc
リウマチ科医は、炎症があるかどうかに関わらず、関節の拘縮または弛緩がみられるすべての患者さんについて、鑑別診断にムコ多糖症を含める必要があります。1,6,10

ムコ多糖症を診察するその他の手段は?

徴候・症状のパターンからムコ多糖症の臨床的疑いを高める

どのような臨床状況であっても、ムコ多糖症を疑うべき徴候は、一見して明らかで、よく観察されるような症状であることもあります。検査を進めていけば、専門領域に特化した臨床評価、検査所見、そして患者さんの既往歴を通じて、さらに症状が見つかるかもしれません。以下は、その具体例です。

ムコ多糖症の徴候と症状1-4,10,12-24

筋骨格系

一般的な特徴

  • 歩行障害
  • 骨異形成
  • 鷲手
  • 粗な顔貌
  • 関節痛
  • 巨頭症
  • 鳩胸
  • 持久力/運動耐容能の低下
  • 低身長/発育遅延a

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 歩行障害
  • 骨変形
  • 多発性骨形成不全
  • 外反膝(X脚)
  • 炎症のない関節合併症(拘縮、関節弛緩症)
  • 脊椎亜脱臼

リウマチ科

一般的な特徴

  • 関節可動性の低下
  • 股関節硬直/股関節痛
  • 関節痛
  • 関節硬直または関節弛緩

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 手根管症候群
  • 関節腫脹のない関節合併症またはびらん性骨病変

耳鼻咽喉科

一般的な特徴

  • 伝音性および/または感音性の難聴
  • 舌肥大
  • 反復性中耳炎

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 咽頭蓋の異常
  • 陥没した鼻梁
  • アデノイド肥大
  • 扁桃腺肥大
  • 中耳粘液
  • 声門上・声門下気道の狭窄
  • 耳小骨形成異常
  • 反復性の過剰な鼻漏
  • 反復性中耳炎
  • 気管肥厚/圧迫
  • 気管閉塞
  • 鼓膜肥厚

眼科

一般的な特徴

  • 白内障
  • びまん性角膜混濁
  • 緑内障

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 弱視
  • 特徴的な「すりガラス」様の角膜混濁
  • 強度の遠視
  • 両目隔離
  • 視神経異常(腫脹および萎縮)
  • 角膜の末梢血管新生
  • 進行性偽性眼球突出
  • 視力の低下
  • 網膜症
  • 斜視

神経系

一般的な特徴

  • 行動異常(ムコ多糖症IVA型とムコ多糖症VI型では概して現れない)
  • 発育遅延(ムコ多糖症IVA型とムコ多糖症VI型では概して現れない)
  • 難聴
  • 発作(ムコ多糖症IVA型とムコ多糖症VI型では概して現れない)

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • くも膜嚢胞(ムコ多糖症IVA型とムコ多糖症VI型では概して現れない)
  • 脳萎縮(ムコ多糖症IVA型とムコ多糖症VI型では概して現れない)
  • 手根管症候群
  • 頚髄圧迫/脊髄症/亜脱臼
  • 血管周囲腔拡大
  • 水頭症
  • 歯突起形成異常
  • 頚部硬膜炎
  • うっ血乳頭/視神経萎縮
  • 感音性難聴
  • シグナル強度の異常
  • 脊柱管狭窄
  • 脳室拡大

心血管系

一般的な特徴

  • 持久力/運動耐容能の低下

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 肺高血圧
  • 左心室肥大における僧房弁または大動脈弁の肥厚、逆流、狭窄
  • 三尖弁逆流

呼吸器系

一般的な特徴

  • 持久力/運動耐容能の低下
  • 睡眠時無呼吸

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 上下気道の閉塞(気管支狭窄、声門上・声門下気道の狭窄)
  • 進行性の肺気量低下
  • 呼吸器感染
  • 睡眠障害(閉塞性睡眠時無呼吸/抵呼吸症候群および上気道抵抗症候群)

消化器系

一般的な特徴

  • 腹痛
  • 便秘
  • 肝脾腫
  • ヘルニア
  • 軟便

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 肝脾腫

歯科

一般的な特徴

  • 頬側面異常
  • 象牙質形成不全
  • 歯数不足
  • 尖頭
  • スペード形の切歯
  • 薄いエナメル質

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 頬側面異常
  • 薄いエナメル質

a骨格系疾患と低身長が顕著に現れない患者さんもいます。

ムコ多糖症の診断を受けていない患者さんは、関節に関する徴候・症状(他のリウマチ症状に似ていることがあります)を呈することが多いため、リウマチ科を訪れる可能性があります。6  よって、ムコ多糖症の患者さんを鑑別するうえでは、リウマチ科が重要な役割を果たします。疑いのある患者さんは、遺伝学の専門医や代謝疾患の専門医に照会して診断を確定し、可能であれば治療を開始する必要があります。1,6  

ケーススタディ:臨床像の全範囲を知る

さらに詳しく

早い段階で検査を実施することにより、早期介入が可能になります。
遅れが生じないようにしましょう。

ムコ多糖症治療は新時代へ。常に情報を入手しましょう。

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