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「小児科医が特定の身体所見を認め、放射線科医によるX線検査において椎骨の異常が確認された場合には、遺伝学の専門医に診せる必要があると判断して欲しいですね。」 -Harmatz医師

古典的・非古典的な骨格系症状は、ムコ多糖症の顕著な特徴

ムコ多糖症を疑い、照会し、長期的に治療するうえで、整形外科は重要な役割を果たす

骨格系症状は、ムコ多糖症(MPS)の特徴のなかでも顕著なものです。1,2  疾患に特化した治療法が利用可能となった今、整形外科医が早い段階で気づけるかどうかが、これまでにないほど重要視されています。1

ムコ多糖症の鑑別は、手術後の転帰を向上させるうえでも重要です。患者さんは麻酔合併症と周術期合併症のリスクが高く、これらの合併症が主な死亡原因となっています。3

古典的に、ムコ多糖症には多発性骨形成不全といわれる一群の徴候・症状が伴います。 しかし、より頑強な骨格系症状が現れる前に(またはその代わりに)、初期に現れる非古典的な骨格系症状に気づくことができれば、ムコ多糖症を早い段階で鑑別することができますので、そのような場合は遺伝学の専門医や代謝疾患の専門医療機関に照会してください。1

ムコ多糖症を疑い、照会し、除外する

新しい情報や治療法のおかげで、早期の鑑別による疾患に適した治療計画の提供とそれに沿った治療が可能になり、整形外科には患者さんとそのご家族の生活を改善につなげるチャンスがあります。徴候・症状に気づき、早期の治療を実現しましょう。

  • 多発性骨形成不全は、古くからムコ多糖症に伴って顕著に現れていた一群の骨格系症状です。1
  • 脊椎骨端異形成症(SED)、多発性骨端異形成症(MED)、Legg-Calvé-Perthes 病に類似する非古典的な骨格系症状は、ムコ多糖症の症状として鑑別されてきました。1
  • 疾患の発症初期では、骨格系症状が単独で現れるかもしれませんし、顕著には認められないこともあります。1
ムコ多糖症患者さんは往々にして多岐にわたる一群の症状を呈しますが、単独で現れたものであっても、遺伝学の専門医や代謝疾患の専門医療機関に照会する価値はあります。ムコ多糖症を疑うための指標を高め、疾患に特化した治療を早い段階で開始できるようにしてください。5,6
The-manifestations-of-dysostosis-multiplex_AMc

ほとんどのタイプのムコ多糖症では、多発性骨形成不全の顕著な特徴を持つ骨格異常と関節疾患が現れるという特徴があります。7

  • ムコ多糖症III型の場合、患者さんが呈する多発性骨形成不全は軽度であり、主に現れるのは中枢神経系の症状となりますので、上記にはあてはまりません。7
  • 患者さんによって多発性骨形成不全の重症度は異なるうえ、症状が単独で初期に現れることもあります。7
国際骨形成不全登録プロジェクト(International Skeletal Dysplasia Registry)に参加している、多発性骨形成不全の確定診断を受けた患者さん151例について調査したところ、約75%の参照医がこの症状をムコ多糖症の特徴であるとは認識していなかったことが分かりました。1

骨格系症状に早く気づくことができれば、患者さんの転帰を向上させられる

疾患に特化した治療法が利用できるようになった今、この疾患に早い段階で気づけるかどうかが、これまで以上に重要視されています。

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若年期における胸腰椎の後弯(左)と突背(右)の例。8

画像提供:M. Grimaldi医師、R. Parini医師、L. Santoro医師、O. Gabrielli医師

進行の遅いムコ多糖症: 新たな知見、新たな理解

ムコ多糖症IVA型(モルキオ症候群A型)と進行の遅いムコ多糖症VI型の患者さんを対象として行われた、非古典的な症状に関する症例集積研究では、多発性骨形成不全の症状が最低限度にしか現れないか、全く現れないという結果が得られました。その代わりに、MED、SED、および両側Legg-Calvé-Perthes様の疾患を示唆する特徴が確認されています。1

  • 扁平椎体症や上/下錐体隆起が現れないので、ムコ多糖症はSEDとは異なります。脊柱側弯、円背(脊柱後弯)および/または椎骨上部に一カ所陥凹があるだけでは、SEDと診断することはできません。1
  • 大腿骨頭形成異常(CFE) は、この研究の対象となった患者さんに認められた顕著な特徴の一つですので、ムコ多糖症の非古典的な表現型を鑑別する際には、この所見が役立つ可能性があります。1

形成異常性大腿骨頭すべり症は、非古典的なムコ多糖症IVA型(モルキオ症候群A型)や進行の遅いムコ多糖症VI型を患う方々に発現することが報告されています。

前後骨盤・股関節、27歳:関節腔の狭窄を伴う軽度の大腿骨頭形成異常(CFE) 硬化(変形性関節症)。1

ムコ多糖症の疑いが高まる徴候・症状について知る

ムコ多糖症は、その症状と進行速度が予測不可能なうえ多臓器にわたり、また多様性もあるので、診断が困難です。5

診断の遅れは珍しくありませんが、患者さんの転帰に深刻な影響を与えてしまうかもしれません。正確かつ早期に診断を下すために、多臓器にわたる徴候・症状を早い段階で鑑別することが重要です。5,9,10  現場で遭遇し得る多種多様なムコ多糖症の徴候・症状に精通しておきましょう。

ムコ多糖症を診察するその他の手段は?

徴候・症状のパターンからムコ多糖症の臨床的疑いを高める

どのような臨床状況であっても、ムコ多糖症を疑うべき徴候は、一見して明らかで、よく観察されるような症状であることもあります。検査を進めていけば、専門領域に特化した臨床評価、検査所見、そして患者さんの既往歴を通じて、さらに症状が見つかるかもしれません。以下は、その具体例です。

ムコ多糖症の徴候と症状1,5,7,9,11-24

筋骨格系

一般的な特徴

  • 歩行障害
  • 骨異形成
  • 鷲手
  • 粗な顔貌
  • 関節痛
  • 巨頭症
  • 鳩胸
  • 持久力/運動耐容能の低下
  • 低身長/発育遅延a

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 歩行障害
  • 骨変形
  • 多発性骨形成不全
  • 外反膝(X脚)
  • 炎症のない関節合併症(拘縮、関節弛緩症)
  • 脊椎亜脱臼

リウマチ科

一般的な特徴

  • 関節可動性の低下
  • 股関節硬直/股関節痛
  • 関節痛
  • 関節拘縮または関節弛緩

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 手根管症候群
  • 関節腫脹のない関節合併症またはびらん性骨病変

耳鼻咽喉科

一般的な特徴

  • 伝音性および/または感音性の難聴
  • 舌肥大
  • 反復性中耳炎

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 咽頭蓋の異常
  • 陥没した鼻梁
  • アデノイド肥大
  • 扁桃腺肥大
  • 中耳粘液
  • 声門上・声門下気道の狭窄
  • 耳小骨形成異常
  • 反復性の過剰な鼻漏
  • 反復性中耳炎
  • 気管肥厚/圧迫
  • 気管閉塞
  • 鼓膜肥厚

眼科

一般的な特徴

  • 白内障
  • びまん性角膜混濁
  • 緑内障

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 弱視
  • 特徴的な「すりガラス」様の角膜混濁
  • 強度の遠視
  • 両目隔離
  • 視神経異常(腫脹および萎縮)
  • 角膜の末梢血管新生
  • 進行性偽性眼球突出
  • 視力の低下
  • 網膜症
  • 斜視

神経系

一般的な特徴

  • 行動異常(ムコ多糖症IVA型とムコ多糖症VI型では概して現れない)
  • 発育遅延(ムコ多糖症IVA型とムコ多糖症VI型では概して現れない)
  • 難聴
  • 発作(ムコ多糖症IVA型とムコ多糖症VI型では概して現れない)

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • くも膜嚢胞(ムコ多糖症IVA型とムコ多糖症VI型では概して現れない)
  • 脳萎縮(ムコ多糖症IVA型とムコ多糖症VI型では概して現れない)
  • 手根管症候群
  • 頚髄圧迫/脊髄症/亜脱臼
  • 血管周囲腔拡大
  • 水頭症
  • 歯突起形成異常
  • 頚部硬膜炎
  • うっ血乳頭/視神経萎縮
  • 感音性難聴
  • シグナル強度の異常
  • 脊柱管狭窄
  • 脳室拡大

心血管系

一般的な特徴

  • 持久力/運動耐容能の低下

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 肺高血圧
  • 左心室肥大における僧房弁または大動脈弁の肥厚、逆流、狭窄
  • 三尖弁逆流

呼吸器系

一般的な特徴

  • 持久力/運動耐容能の低下
  • 睡眠時無呼吸

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 上下気道の閉塞(気管支狭窄、声門上・声門下気道の狭窄)
  • 進行性の肺気量低下
  • 呼吸器感染
  • 睡眠障害(閉塞性睡眠時無呼吸/低呼吸症候群および上気道抵抗症候群)

消化器系

一般的な特徴

  • 腹痛
  • 便秘
  • 肝脾腫
  • ヘルニア
  • 軟便

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 肝脾腫

歯科

一般的な特徴

  • 頬側面異常
  • 象牙質形成不全
  • 歯数不足
  • 尖頭
  • スペード形の切歯
  • 薄いエナメル質

専門領域に特化した評価から分かる特徴

  • 頬側面異常
  • 薄いエナメル質

a骨格系疾患と低身長が顕著に現れない患者さんもいます。

骨格系症状は概して早期に現れるムコ多糖症の指標ですので、この疾患の鑑別をするうえでは整形外科が重要な役割を果たすことができます。疑いのある患者さんについては、遺伝学の専門医や代謝疾患の専門医療機関に照会して診断を確定し、可能であれば治療を開始する必要があります。1,4,25

よくある骨格系疾患か、それともムコ多糖症か?

骨格系疾患の鑑別診断ではムコ多糖症を考慮してください

ムコ多糖症の症状は似通っていますので、より一般的な骨格系疾患と混同されてしまうことがあります1,7  また、ムコ多糖症の治療は人生を変えてしまうほどの影響を患者さんに与えますから、正確かつ早期の診断が重要です。ムコ多糖症の疑いがある患者さんがおられましたら、遺伝学の専門医や代謝疾患の専門医療機関に照会することを検討してください。

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ムコ多糖症の骨格系症状が若年期に単独で現れた患者さんに対しては、ムコ多糖症を疑ってください。このような症例においては、一般的に、次に挙げるような筋骨格系の異常も認められています。1

  • 発育遅延
  • 歩行障害
  • 股関節痛

ムコ多糖症またはその他の骨異形成が疑われるときには、全骨格検査を実施する必要があります。7画像検査の対象を個別部位だけに限定してしまうと、所見を見落として正確な診断ができないことがあります。

整形外科の現場でみられた、進行の遅いムコ多糖症VI型を有する小児患者のケース1

症例は臨床症例の一部を紹介するも ので、全ての症例が同様な結果を示すわ けではありません。

概要

MED様の表現型とともに角膜混濁などの全身性症状が観察されたため、早い段階からムコ多糖症が疑われました。その結果、診断の確定とそれに続く治療を開始するまでの時間を短縮することができました。

ムコ多糖症の骨格系症状(古典的な多発性骨形成不全や非古典的な症状など)を有する患者さんに対して疑いを高めることにより、診断までの時間を短縮することができます。
7歳:
  • 低身長のため、整形外科に照会
  • X線検査において、過大大腿骨頭・大腿骨頭の変形・骨端および骨幹端の異常を伴う両側臼蓋形成不全が認められる
  • 身体検査結果:身長117.5 cm(5パーセンタイル未満)、体重22 kg(5パーセンタイル)、頭囲54.5 cm(+1SD)
  • 肩部に可動域制限あり
  • 角膜混濁あり
  • 初回診断結果:MED
  • 処置:骨異形成の専門医療機関と整形外科に照会
10歳:
  • 心雑音あり
  • 心臓検査において、逸脱・逆流を伴う僧帽弁肥厚、軽度の大動脈弁閉鎖不全が認められる
  • 遺伝科にて、軽度の外反膝(X脚)、動揺性歩行(あひる歩行)、脊柱前弯、広く陥没した鼻梁が認められる
  • ムコ多糖症が疑われ、全骨格検査と酵素パネル検査を受ける
  • 診断結果:ムコ多糖症VI型

さらに詳しく

早い段階で検査を実施することにより、早期介入が可能になります。
遅れが生じないようにしましょう。

ムコ多糖症治療は新時代へ。常に情報を入手しましょう。

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